金沢大学 薬物動態学研究室

研究方針

主な研究テーマ

・ 消化管生理環境・機能の定量的解析とそれを基盤にした薬物吸収動態予測モデルに関する研究

・ 薬物-飲食物間相互作用とその定量的予測法に関する研究

  • ・ 薬物性消化器毒性の発現機構解析とその評価手法に関する研究

研究の概要

 医薬品の作用は生体内濃度によって決まるため、濃度を決めるメカニズムと時間変化を定量的に理解するのが「薬物動態学」です。薬物動態特性は薬効とは無関係なため医薬品分子ごとに解析しなければなりません。私たちは、創薬段階でのGo or No-Go判断、投与剤形・量・経路の最適化、併用薬・食品との相互作用や個人差・病態時変化への対応など、創薬・育薬・臨床に有用な薬物動態情報を発見し、300報以上の原著論文を発信してきています。  

 私たちの研究は、特に薬物動態特性を決める細胞膜透過に着目し、様々な医薬品の吸収・組織分布・消失(ADME)に働く「トランスポーター」タンパク質を対象にしています。医薬品は元来生体異物であるため、生体は薬に対する防御・解毒機構として「P-糖タンパク質」など吸収・組織移行を低下させ、また消失を促進する「薬物トランスポーター」を有しています。特に、私たちが見出したP-糖タンパク質の「血液脳関門機能の実証」は世界初であり、その後の薬物動態の概念を変えるに至っています。また、新規OATPトランスポーター分子群の発見を基に、そのADME上の役割と薬食相互作用因子としての重要性を見出しました。創薬にはこのような「薬物トランスポーター」障壁の克服と利用による薬物動態の最適化が必要であり、臨床的には相互作用・病態・遺伝子多型によるトランスポーター活性の変動に伴うリスクの回避が求められます。私たちの研究はその基盤と応用の両側面からの科学的情報を生み出すことを目的としています。  

 一方、トランスポーターは医薬品だけでなく、生命維持に必須な栄養・生理活性物質の調節にも関わっています。脂質代謝に必須なカルニチンの作用はOCTN2トランスポーターにより決まることを見出し、その成果は全身性カルニチン欠乏症の診断・治療に応用されています。患者数増加が著しい痛風・高尿酸血症に関わる尿酸トランスポーターに関する研究は、新規痛風治療薬の創製にもつながり、薬物誘導型尿酸値変動機構に関する成果とともに、臨床的インパクトを与える薬学的研究として医学領域でもその成果が利用されています。  研究は発表されてしまえばもう古いものになってしまいます。現在は上記研究をさらに展開しながらも、経口投与剤形の最適化、食品含有ナノ粒子の作用と応用、ADMEならびに毒性の新しい評価法など、トランスポーターが関わる新規研究を続けています。

2018 International Meeting on 22nd MDO and 33rd JSSX

第39回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム

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